メチャメチャ良書!!「原発ゼロ社会へ! 新エネルギー論」広瀬 隆著 集英社新書
2012-12-10


その工業界のシンボルである自動車業界でいえば、トヨタ、ニッサン、ホンダ、スズキ、マツダ、三菱、スバル、ダイハツ、イスズなどに代表される有数のブランドがあって、これら自動車の優劣が、「エンジンの性能」にかかっていることぐらい誰でも知っている。

ところがその意味は、それだけではない。この日本中を走り回っているエンジンは、そのまま発電機として電気を生み出せる機械なのである。

事実、ホンダは発電機のメーカーでもあり、ガス業界と組んで最もすぐれた発電システムを精力的に開拓している。

 一方、家電製品や重電機のメーカーにおいても、パナソニック(その傘下のサンヨー)、東芝、日立、三菱グループ、シャープ、富士電機など有数の企業が目白押しで、彼らもまた発電機やモーター類の専門メーカーであり、日本中にそれを普及してきた。

 たとえば洗濯機のモーターはなぜ動くのだろうか。その原理は、中学時代に習ったように、電流と磁石による電磁誘導を利用して、「電気を流す」と磁石の磁場に置かれた回転子が回り続けるという作用である。オモチヤの汽車や自動車が走り出すのは、電池から送られた電気がモーターを回すからである。それに対して発電機の原理は、現在までほぼ一世紀にわたって普
及してきた方式では、ちょうどその逆で、何らかのエネルギーで回転子を回せば、やはり電磁誘導によって「電流が生み出される」というメカニズムを利用している。

 自転車のペダルをこいでタイヤを回せば、電灯がつくことは、誰もが知っている。それと同じ原理だ。その回転エネルギーとして、落下する水で羽根を回すのが水力発電。

 風の力で羽根を回すのが風力発電。ガス、石炭、石油を燃やした熱で水蒸気を生み出し、タービンの羽根に当てるのが、火力発電である。ジャンボジェット機が翼の下につけているエンジンと同じように、ガスを燃やした時に出る噴射力をそのまま利用し、発電機を回すガスタービンもある。

 何も、電気を電力会社から支給してもらわなければ、工業界が死滅するような世界ではまったくない。

 笑ってしまうような話だ。原子力発電のように複雑怪奇で、高価で、危険きわまりない装置をつくったり、使うことが、どれほど馬鹿げているかということは、まともなエンジニアであれば最初に気づく「最も基本的な事実」なのである。

 原子力発電とは、もともと戦争用に、ウランの核分裂エネルギーを利用して原子爆弾をつくった人間たちが、その爆弾の巨大なエネルギーをコントロールしながら発電に利用しようとして考案した道具である。

 ならば、ガスを燃やすより、ダイナマイトの爆発力のほうがエネルギーが大きいからといって、家庭の台所で煮炊きをするのに、ガスコンロの代りにダイナマイトをコントロールしながら燃やそうとは、誰も考えないだろう。

 言い換えると、それほど危険な方法を使って、発電するのが原子力発電である。

 電気なんぞ、こんな危ない方法を使わずに、どこにでもあるエンジンを使って、簡単に誰でもつくれるのだよ。

 ましてや、世界トップを誇ってきた日本の工業界が、こんな発電技術で困るはずがない。

 私が工場技術者だった一九六〇年代には、多くの大工場で、自社の持っている水力ダムや発電機を使って発電することが珍しくなかった。

 ところが一九七〇年代からは、工業界が電気を電力会社に一方的に依存するようになってしまったため、電力会社が電気を送ってくれなければすべての工場やビルが停電すると、現代人が勘違いしているだけである。p-13

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